累積和管理図は,個々の観測値と参照値との偏差の累積和,もしくは群の平均値と参照値との偏差の累積和をプロットした管理図です.
個々の点だけではなく,それまでの点の情報を利用しているので,シューハートの3シグマ管理図よりも工程平均のシフト的な微小な変化を早く検出することができます.そのため,累積和管理図は工程平均が一方向にシフトし制御変数の操作で調整可能であるような状況に有用です.
累積和管理図に現れるトレンドは,Vマスク法や決定区間法によって特定されます.特に,Vマスク法は累積和がプロットされるたびにV字形のマスクをあて,それ以前のプロットがV字形の図形内にあるかどうかで工程平均が変化したかどうかの判定をします.
累積和管理図はJIS Z9020に「二つ以上の群の累積データを用いる管理図」の一つとして記載されています.また,IATF16949:2016の要求事項には「継続的改善の技法」の一つとして記載されています.
累積和管理図を用いた事例をご覧いただけます.
TDKとしてのQS-9000への取り組み
ここでは,『CONTROL CHARTS』p.67表6.8のデータに対する解析例を示します.
これは,1951年から1953年までのアメリカの全小売店の月ごとの売り上げデータ(10億ドル単位)です.
メニュー[手法]-[工程分析]-[累積和管理図(CUSUM)]を選択すると「管理図の選択」ダイアログが表示されます.
データの種類に応じて「Xbarの累積和管理図」か「Xの累積和管理図」かを選択します.
この解析例では,「Xの累積和管理図」を選択します.
管理図の選択を行うと「変数の指定」ダイアログが表示されますので,解析に用いる変数を指定します.
この解析例では,量的変数を1個,サンプル名を1個選択します.
変数の指定を行い「次へ進む」ボタンを押すと「累積和管理図の設定」ダイアログが表示されます.
「累積和管理図の設定」ダイアログでは,X管理図(もしくはXbar管理図)の管理線および累積和管理図のVマスク法による判定に関する設定を行います.
この解析例では,参照値を14とし他はデフォルト値(Vマスク法による判定に関する第一種の誤り:0.003,Vマスク法による判定に関する第二種の誤り:0.001,処置レベル:14±1.711)を使用します.
「累積和管理図の設定」ダイアログの「OK」ボタンを押すと「累積和管理図」画面が表示されます.累積和管理図においては,デフォルトでは一番最後の群にVマスクが表示されています.
この解析例では,累積和管理図より最初の15ヶ月間(1951年1月~1952年3月)は参照値(=140億ドル/月)より少ない売り上げでほぼ一定であり(ほぼ130億ドル/月),その後の21ヶ月間(1952年3月~1953年12月)は参照値(=140億ドル/月)と同じ売り上げでほぼ一定であることが分かります.実際,1952年3月のデータにVマスクを表示させるとVマスク外にデータがあらわれ,売り上げが参照値(=140億ドル/月)より少ないと統計的に判定されます.
なお,X管理図に管理限界線外のプロットが1個ありますが,これは1952年12月のデータ,すなわちクリスマスセールの影響です.
「累積和管理図」では,個々のデータもしくは群の平均値に対する累積和管理図を表示し,Vマスク法により工程平均の変化を検出することができます.ここで,Vマスク法による判定に対しては第一種の誤りや第二種の誤り等の設定をおこなうことができます.また,Vマスクは,最後の群,最初にVマスク外があらわれる群,指定した群に対して表示させることができます.
「累積和管理図」では,累積和管理図と同じ画面内にxbar管理図,もしくはx管理図が表示されますので,平均の変化だけではなく,群間のばらつきも同時に管理することができます.
さらに,管理図上にプロットされたデータの一覧表示,Vマスク外にあるデータの抽出表示,管理限界外にあるデータの抽出表示を管理図計算表画面で行うことができます.
※ 「画面はJUSE-StatWorks/V4.0のものです」
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