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TDKとしてのQS-9000への取り組み(TDK株式会社 野中英和氏)

こちらの内容は,第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウム 品質管理・QS-9000セッションでの発表事例をまとめたものです.

1. はじめに

弊社の電子部品事業本部では,QS-9000を品質保証システムとして,ほとんどの拠点が採用し,取得している.

QS-9000はISO9000の要求事項に米国自動車メーカBig3(クライスラー,フォード,GM)独自の要求事項を追加したもので,ISO9000より具体的な手法を提示している.この要求手法に対してのTDKとしての取り組みについて紹介する.

2. QS-9000の概要

ISO9000とQS-9000の違いは,ISO9000は“不具合を流出しない”仕組みであるのに対し,QS-9000は“不具合を作らない”仕組みを前提にしていることである.そこで,“不具合を作らない”ようにするため,より具体的な手法が提示されている.

QS-9000は本文の他に,以下のマニュアルから構成されている.

QSAは,QS-9000の審査で使用する評価項目である.

MSA,SPC,FMEAは“不具合を作らない”ための具体的な手法であり,QS-9000の認証を受けるためには必要(Shall)の手法である.このほかに本文中にベンチマーキングやポカヨケといった手法がShallになっている.

PPAPはQS-9000対象製品の承認を行うためのプロセスがかかれており,Big3に納める製品はPPAPをもとに承認を受ける.

APQPは品質計画を実施するための手順書である.開発から量産,量産後の是正処置までのフェーズ毎に実施する内容が決まっている(図1).弊社のQS- 9000を認証している拠点では,APQAの仕組みに乗っ取り,製品開発から量産までの仕組みを計画し,維持管理している.この際にQS-9000で Shallになっている手法や,紹介されている手法を活用している.

図1はAPQPに記載されるタイミングチャートであり,このタイミングチャートに基づき弊社ででは図2のようなフローで製品企画から量産までの品質計画を実施している.今回は,弊社で使用している各手法へ適応事例とその考え方について紹介する.なお,各手法はそのときだけに使用されているのではなく,様々なところで使われている.今回は代表的なタイミングのみを紹介する.


図1. APQP(製品品質計画)タイミングチャート

3. 企画段階

(1)ベンチマーキング

ベンチマーキングは,「特定のプロセスまたは製品に対する“最良”の方法を求めるために使われる手法」とQS-9000では定義されている.

弊社では企画段階から品質項目別目標管理表(図3)を使用し,他社品評価を行い,設計目標を立案するのに活用している.

品質項目別目標管理表

(2)品質機能展開(QFD)

品質機能展開は,「顧客の要求事項を,製品の開発・製造の各段階に対する適切な技術的要求事項に置き換える手法」とQS-9000では定義されている.

弊社では実験計画を行うための要因分析に活用しており,また,後述の設計/工程FMEAを融合させるためのツールとして今後活用する予定である.

4. 設計・試作段階

(1)設計FMEA(Design Failure Mode Effects Analysis)

設計FMEAは設計時点で,製品設計の不具合を予想する手法である.設計FMEAはQS-9000ではShallの手法である.

弊社では設計FMEAを活用し,潜在的な不具合の防止,信頼性試験項目,各技術との連携(横断的機能チームといわれる,組織をまたがったチームでFMEAを実施するため),など幅広く活用している.

(2)実験計画法(DOE)

実験計画法は,設計・試作段階だけで使用するわけなく,あらゆるフェーズで利用できる手法である.実験計画法の知識は技術者の最低限必要な知識としている部門もある.

開発速度のスピードアップ,再現性のある条件の発見などに設計・試作段階では活用している.

5.生産準備段階,初期流動段階

(1)工程FMEA(Process Failure Mode Effects Analysis)

QS-9000ではコントロールプラン(工程管理表)を作成し,それによって工程を維持管理させることをShallにしている.コントロールプラン作成のため,また設計品質を工程管理項目に置き換えるために,工程FMEAを実施している.

工程FMEAは生産準備段階だけでなく,問題が起きたときの原因追及のため,工程管理項目の見直しのためなど広い範囲で活用している.

(2)MSA(Measurement Systems Analysis:計測精度調査)

工程設計を行う上で,必要な管理項目が正しく測定できているかを把握することは非常に重要なことである.測定能力がどの程度あるか,問題があるならば何を改善する必要があるのかを分析する一連の手法がMSAである.

MSAは大きく分けて,5つに分類されている.

[1] GRR(Gage Repeatability and Reproducibility)

複数いる測定者が,人によってどの程度ばらつくか(ヒト間バラツキ),同一な人が同じサンプルを測定したときに,どの程度ばらつくか(繰り返し性)を調査する方法がGRRと呼ばれている.

GRRはMSAの中心となる手法である.

実施方法は測定作業実施者に複数のサンプルを2回以上繰り返し測定してもらう(表1).このとき,測定者には測っているサンプルをわからないようにするなどの注意事項はいくつかある.

表1. MSA実施データ例
サンプル1サンプル2サンプル3サンプル4サンプル5
測定者1 35.4639.132.9322.2111.836
35.738.6232.1522.0811.825
35.4339.0432.8622.1511.813
35.6239.0732.9222.1711.814
35.7738.9732.0721.9911.811
測定者2 36.0939.6931.8321.7811.812
35.539.5232.6621.8611.844
35.8539.3132.1721.6611.813
35.4439.7732.0721.5611.807
35.3439.5932.1721.7711.828
測定者2 35.4438.7432.1322.1511.692
35.0838.9533.2822.1311.802
35.4338.8933.0522.0511.755
35.5438.4532.2121.8811.803

表2. GRR結果例

得られたデータをX-R法,分散分析法(ANOVA)などの解析方法によりスペック(または工程変動量)の割合に対してどの程度ヒト間・繰り返しバラツキが含んでいるかを調査し,評価する.

[2]直線性(Linearity)

計測器が測定範囲内すべてで,正しく測定できているかを調査することを直線性という.

図 の直線性の概念図は,縦軸が真値と測定値の差を,横軸は真値をプロットしたものである.例では,測定値が大きくなればなるほど,大きめに測ってしまっていることを示している.

図4. 直線性概念図

直線性を求めるには,工程範囲を表せる3つ以上のサンプルとその真値が必要になる.

測定範囲内で動いてしまっている誤差の量と,測定範囲の幅を比較し,直線性に問題があるかないかを検討する.

[3]正確さ(Bias)

正確さは,測定器自体が正しく測定できているかを調査する項目である.方法は同じサンプルを10回以上繰り返し測定し,バラツキを見る.

正確さで出たバラツキと,GRRのヒト間バラツキを比較する.仮に正確さの値がヒト間バラツキより大きいときは,測定器自体の問題を解決してからGRRを再実施する.

[4]安定性(Stability)

前述のGRRなどは,その場,その場の解析であり,その瞬間での結果にすぎない.

GRRが合格であり,それが常に維持できているかを調査するのが安定性である.

安定性は標準サンプルを一定間隔で測定し,その結果を管理図化(X-R,X-MAなど)することによって見ることができる.

GRRが実施できないような測定(粘度測定など測定することによって特性値が変わるもの)には,安定性を見て,測定器の保証をすることは重要である.

図5. 安定性例

[5]Go/Out判定ゲージ

高さゲージなどの良・不具合のみを判定するものについては,良品の中に不具合サンプルをいくつか混ぜ,複数の作業担当者がゲージに繰り返し通して,常に不具合サンプルが,取り除けることを確認する.

QS-9000ではGRRには下記のような判定基準が設けられている.

 %R&R < 10% 合格
10% ≦%R&R < 30% 条件付き合格
30% ≦%R&R      不合格

※ %R&R:ヒト間バラツキと繰り返しバラツキを足して,スペック・工程変動値に対しての%(割合)を取ったもの)

GRRが合格しない場合には,直線性・正確さなどに問題があるときが多い.GRR合格のためにも,その他の項目を積極的に調査し改善に結びつける.

(3)初期工程調査

顧客の要求事項を満たす製品を生産可能か判定するため初期流動段階での品質評価を行う.QS-9000ではこの調査にCp(Process Capability 工程能力),Pp(Process Performance 工程性能),管理図などのSPC(Statistical Process Control:統計的工程管理)手法を推奨しており,弊社でも実施している.

[1]CpとPp

Pp =(上限規格 - 下限規格)/(6σ)
Cp =(上限規格 - 下限規格)/(6R(/d2))

一般に工程能力(Cp)としてなじみ深いのはPpのほうである.

CpとPpの使い分けだが,まずPp≧1.67を達成させ,管理図が安定するようにする.このことが量産移管の条件になる.量産以降はCpと管理図で工程管理を行う.なお,Pp算出に必要なn数は100以上で,管理図のプロット数は25点以上必要になる.

慢性的に不安定な工程であるが,スペックを満足するもの,又は評価サンプル数の少ないものはPpを用いることを推奨している.

Ppでの評価が続く場合,原因を取り除くまではPPAP(QS-9000対象製品)の承認が得られない.PPAPの期限までに改善されない場合は是正処置計画書と全数検査を含むコントロールプランの顧客承認が必要である.

[2]管理図(Control Charts)

QS-9000では,一般的な管理図(X-R,X-MA,pなど)の他に,CUSUM(累積和管理図)の使用などを推奨している.

図6. 工程性能分析

6. 量産段階

(1)ミス防止法(Mistake Proofing)

QS-9000では,製品設計,プロセス設計を行うときに,ミス防止を予防処置として行うことを義務づけている.弊社では作業者が作業を行うための作業標準を作るのは主に初期流動中で,その際にフルプルーフ化などを行い,作業ミス低減に勤めている.

弊社ではヒューマンエラー削減のための研究会を,製造・QAを中心に開催している.その中で,EMEA(Error Mode Effects Analysis:作業FMEA)について,ミスの起こりやすい作業を抽出し,フールプルーフ化を行っている.

表3. EMEA例

7. FMEAのQFDによる統合

設計FMEAは設計・試作段階,工程FMEAは生産準備段階,作業FMEAを初期流動・量産段階で実施していると前述した.しかし,これを各々使用するのではなく,設計管理項目を実現するために工程管理項目はどうあるべきか,工程管理項目を実作業に置き換えた場合,作業者にどのようなことをしてもらうのか,など各FMEAは関連している.

この関係をQFDで統合することを今後弊社では進めていく予定である.

表7. QFDにおるFMEAの統合

8. 手法教育

(1)Off JT

QS-9000だけでなく,様々なQC手法について本社品質保証部が中心になり,各手法のOff JT教育を行っている.代表的なコースを上げる.

(2)Lotus-Notesによる水平展開

弊社ではグループウェアツールであるLotus-Notesを全社で運用している.Notes上で各種手法の紹介,FAQ,事例紹介を行っており,いつでも,誰でもが各自で手法について調べることができる.


図8. Note画面抜粋

参考文献


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