1. ホーム
  2. 統計解析・品質管理
  3. 会員広場
  4. 六一学者の千字一話(連載)

第27話 国民の義務(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


このところ,国民年金の未払いや未加入で政界が大変な問題になったが,年金への加入が国民の義務であることが国会議員にも理解されていないらしい.日本の年金制度は,自分が払ったお金が貯められて(あるいは運用されて)将来の自分の年金として帰ってくるのでなく,今払っている分はおもに現在年金を貰っている人の分を支えている.

ところで,統計関係者にとって忘れて欲しくないのは,もう一つの国民の義務である政府統計に対する個人や法人の申告の義務である.これは,統計法(昭和22年3月制定)の第5条に定められている.統計法で総務大臣が指定して公示する統計を指定統計という.

もっとも基本となる統計中の統計は国勢調査で,来年の平成17年にも実施されるが,皆さん,申告(調査表が配布されるので記入指定して提出すること)を忘れないようにしましょう.また,事業所・企業調査は,事業所と企業を対象とした重要な指定統計調査であるが,この6月1日には商業調査とサービス業基本調査とともに同時に実施される.

60あまりの指定統計のほかにも多くの政府統計があり,「統計報告調整法」によって統計としての重複がないように調整が義務付けられて政府から承認される必要のある承認統計(180あまり)と,届出が必要となる届出統計(50あまり)などに分けられている.最近は,環境統計なども国民の関心が高いものであるが,環境統計は一つの統計ではなく,いろいろな統計の集まりであるが,指定統計でも,承認統計でも,届出統計でもなく,行政資料的な位置付けでの調査のようにもみなされるものもある.

政府統計は,中立的な立場で公正で正確な統計を国民に提供するものであるが,これには国民の協力がなくては不可能である.そして,統計を十分に活用していただけるように迅速に分りやすく公表するようにも努力されている.国民に申告義務を課す一方で,調査の結果知られた個人や法人の秘密事項についての保持について調査側の義務も規定されている.

筆者の講義では,年間の授業のはじめにしばしば都道府県別統計などの政府統計を利用するが,今年はまず,国民の義務について注意を促した.これからも大学で統計を講義される先生は,この国民の義務についてもよく教えていただきたい.また,最近は,総務省統計局関連のウェブサイトが充実されてきているので,是非覗いていただきたい.とくに,統計データ・ポータルサイト(https://www.stat.go.jp/)を利用してください.


2004年5月25日掲載

イベント案内や製品などの最新情報をお届けします

メールマガジン
最新の製品アップデート情報やセミナー・イベントなどのお知らせを,eメールでお送りします