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第26話 学習計画と問題意識(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


前回は,学習計画を作るように学生に要求したところまでを書いたが,学生によるレポートのいくつかを紹介しよう.前回示したガイドラインは,学生には必ずしもわかりやすいとはいえないようであった.また,学生もガイドラインをどう使うかもわからないようである.

学習計画作成ガイドラインの2の(4)「友人のネットワーク」で,授業を欠席した時に,その様子を聞いたり,資料をコピーさせてもらうための友達を作っておくことが望ましいといっておいたが,ほとんどの学生は,何も触れていなかった.同じ授業を取っている仲間の中で頼りになる友達はほとんどいないらしい.学部より社会人大学院のほうがよほど連帯意識が高い.一部の運動部や運動サークルに入っている者は,まだしも仲間で助け合う気持ちはあるが(時には,代返や出席署名の代筆もやることがあるが),多くの学生が孤立しているのは驚くほどである.

さて,データ処理の授業の学習計画で成功した例は,次のようなテーマを設定した場合である.

ガイドラインでは,テーマを「○○について統計的に経済的に環境ビジネス的考察」とするとよいとしていたが,この○○には,自分の好きなことや関心のある事柄を取り上げるように説明していた.(経済的にとか環境ビジネス的にというのは,受講学生の所属が経済学部の経済学科や環境ビジネス学科であることによる).

このようなテーマを決めると,まずは,図書館で統計データや白書類を調べて,データのありかを知ることを宿題にする.最近は,インターネットで何でも調べる癖が付いてしまっているが,図書館を覗いてみるのもよいことである.(2回目の授業で,学生と一緒に図書館にいって,統計資料室などを覗いてみた).

例.都道府県別日照時間(1995年)の分布
件数
13*51
14892
1501123477
16052
1705664
1871
19225665
20112566888910
21001337778
224583
23*12664
 47

とくに,統計の初心者には,都道府県データは教材の宝庫である.日本のエネルギー問題に関しては,太陽光発電の普及状態が取り上げられたが,普及の程度はどのような指標で測られるのかということから問題になった.統計では,指標や変数の定義,その測定や調査方法を考え,理解することが大切である.日本全体での発電量に占める太陽光発電量のデータはいちおう発表されているが{ちなみに,最近は1%程度),都道府県別普及率というとどう測るのだろうか.民家やビルの屋上での設置割合はデータになるだろうか.

次に取り上げたのは,都道府県別年間日照時間で,東北と九州や四国ではずいぶんと差があることが分る.短いのは秋田県の年間1300時間ぐらいから長いのでは宮崎や高知県の2300時間以上.1日平均4時間以下から6時間以上の差がある.

データでは,指標の定義,測定単位に続いて,概数を掴むこと,そして特徴を把握することが大切で,例えば,ヒストグラムや幹葉表示を書かせるだけでなく,そこから観察されることを記述させることが重要な訓練となる.以下のような幹葉表示を作成したとき,これをどう読むか,何を観察するか説明させるとよい.

学生が個々に学習計画を立てて,テーマを持つと,問題意識をもって学習を進めることができそうである.テーマに合うように自ら調べ自ら考えることができれば,学習計画のねらいは成功である.(しかし,いつも思うように学生が乗ってくるわけでもない).

次回は,幹葉表示からのデータの観察について考えよう.


2003年8月4日掲載

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