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第39話 (続々)日本列島ジニ係数 —衆参議員選挙での一票の格差—(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


前回第38話では,規模や構成人数の異なるグループに対して,グループ単位に配分されたときのジニ係数を論じた.そのとき,国政選挙での選挙区別定数についてその格差をジニ係数で測るとどうなるかという問題を提起しておいた.これについて,二三のケースを検討したので,紹介しておこう.

データは,総務省から平成17年12月26日に公表された報道資料「平成17年9月2日現在選挙人名簿および在外選挙人名簿登録者数」のデータを用いた.以下では,その報道資料で一票の格差の計算などに使っている在外を含まない選挙人名簿登録数(ここでは,有権者数ともいう)を用いた.


図1. 参議院の一票の格差
(ジニ係数は0.249)

まず,参議院選挙は,都道府県単位で定数が決まっており,東京都は8人,神奈川県,大阪府などが6人,北海道などが4人,山形県などの小規模県が2人となっている.

ジニ係数の計算は,人口一人当たりの定数では小さな数になるので,その逆数の定数一人当たりの有権者数を計算し,その値で大きいほうから小さいほうに並べ替え(東京が128万6千人,千葉が122万9千人,・・・の順で,最小は,鳥取県の24万7千人),その順に従って有権者数と定数をそれぞれ累積し,ローレンツ曲線を描き(図1),ジニ係数を計算する.その結果は,0.249となった.いわゆる一票の格差は,東京都対鳥取県の比率で測られ,5.2倍である.

次に,衆議院は,定数1ずつの小選挙区について検討したが,東京都の25区から,鳥取や島根の2区まで,300区あり,これについて1区当たりの有権者数のデータからジニ係数を求めると0.108となった(これを総ジニ係数(衆議院)とよんでおく).そのローレンツ曲線を図2に示す.ちなみに,東京都6区が最大有権者数46万8千人をもち,徳島県第1区が最小で21万5千人,その比率は2.18である.

同じデータについて,都道府県別に集計し,1定数当たり平均有権者数を求め,これを使ってジニ係数を求めると0.078となった(ローレンツ曲線は図3).これは都道府県の中での1区当たり有権者数のバラツキを無視しているもので,これを都道府県間ジニ係数(衆議院)とよぼう.

図2
図2. 小選挙区間格差
図3
図3.都道府県の格差

これは,いわゆる分散分析でよく行われる平方和の分解で,層間(級間とか群間などともいう)変動と層内変動に分けることがあるが,その層間変動に相当するジニ係数とみなされる.

層ごとの平均を層内の個々のデータとするもの(層平均データ)と原データとの相関係数を相関比ということがあるが,その相関比は0.749となる(層平均データと原データとの散布図を図4に示す).図2と図3でのジニ係数の比は,0.723で相関比と近い値になっており,この比率をジニ係数相関比とよぶといいかもしれない.相関比の2乗は,回帰分析での寄与率(決定係数ともいう)に相当し,寄与率でみれば0.5であるので,層内の変動も相当大きいことがわかる.


図4. 衆議院小選挙区都道府県別平均有権者数(層内平均)と各選挙区での有権者数の関係

さらに,層内変動に相当する成分を検討することも興味があるが,ジニ係数がすでに0.108と小さいので,層内の変動を出して図にしてあまり明確にはならない.47都道府県の一つ一つでの変動は,選挙区数が2しかないところもあり,データ解析としては,層の併合を考えるところである.とりあえず,都道府県ごとの1区当たり有権者数のバラツキを箱ひげ図でみてみよう(図5).層内変動とジニ係数の関係をはっきりと見ることもできる簡単な数値例を次回に示す予定.

図5. 都道府県別衆議院選挙一人当たり有権者数のばらつき
(ソフトの都合で,23都道府県とその他の表示となっており,三重県が抜けている).

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