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第20話  森口繁一先生とのメイル(2) 教科書の表情(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


「森口より
先日岩波に頼まれて,添付ファイル(教科書の表情.doc)のような原稿を出しました.
今度出る「統計科学シリーズ」の月報に使うそうです.
これを読んで,ご意見をお聞かせ下さいませんか.
特に終りの方の「CT」以降について,どう思われますか.
私は.卓上計算機時代の表情がちっとも変わっていないと思うのです.
それで,伸ばしてもらった残りの寿命を,この面での「革命」に捧げようと
考え始めたのです.具体的には,近いうちにまたメールをさしあげますが,
その前に,率直なご意見をお聞かせ下さい.」

これは,9月17日の森口繁一先生からのメールです.

その添付ファイルには,「教科書には表情がある.」という書き出しで,旧制高等学校時代の確率の教科書に触れ,ご自身のテキスト(いまなおベストセラーである培風館の初等数理統計学や日本規格協会の統計的方法など)での工夫(千字一話シリーズの第1話でも触れました)が述べられています.そして,一般の教科書の表情として,統計計算における公式の扱いについて,卓上計算機時代を思い出させる「修正項,CT:Correction Term」,そして仮説検定でのF値とF表をとりあげ,それらがいつまで生き続けるであろうかと書かれている.最後には,デミング博士が「私は電子計算機はきらいだ」といわれたエピソードを紹介し,IT時代の統計教育を正しく進める上でも,手計算時代には自然とできた「データを肌で感じる」ことをどうやったらよいかに着眼すべきことを説かれています.

これに対しての六一学者の返事(9月20日).

「教科書の表情,楽しく拝読しました.
CTは,もう死んでいると思っていました.
F表は,医薬分野では,しばらく生き残りそうですが,
F分布のマジックナンバーの4や回帰分析の変数選択で使うF=2などの意味がわからなくなるのはおしいことです.F表の値が自由度によってどのくらい違うかをじっくり見ることの楽しさも失われそうです.」

その日のうちに,先生から返事がありました.

「森口より
早速の応答,どうもありがとう.
F表の価値は私も感じています.もっと少数の自由度について総合的にながめられる
ような表がいいとも考えています.
日科技連(日科技研)のソフトウェアの現状は?
これからもいろいろご協力願います.
  早々」

齢86の先生とこのようなメイル交換ができなくなったことはさびしい限りですが,残りの寿命を「革命」にささげるといわれる先生の若さを感嘆し,それを受け継ぎたいと思うばかりです.


2002年12月12日掲載

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