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第47話 新型インフルエンザの感染者数の推移(その2)(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


6月に入って,新型インフルエンザの勢いが増した.7月3日現在で,感染は126カ国に広がり,確認された感染者数は89921人までに増加した.前回の第46話では,4月末から6月4日までについて,世界で確認された新型インフルエンザ感染者の推移と1日ごとの増加率の変化を折れ線グラフで示した.ちなみに6月4日のデータでは,感染者は2万人であった.その後のデータを加えて,成長型の推移データの見方を検討してみよう.

データはWHOの更新情報から

前回は,日本経済新聞や共同通信などで報道されたデータを基にしたが,5月の下旬からは新聞での扱いも小さくなって,世界での感染状況を知るには,世界保健機構(WHO)がそのウェブサイトでの公表が確実な情報源となった.

そのシリーズは4月25日に始まり,26日,27日,28日とupdateされ,そこまではSwine influenza (豚インフルエンザ)と言われていた.29日のupdate5からInfluenza A(H1N1)という表記になり,日本では新型インフルエンザというようになった.5月上旬は1日に2回更新されていたが,その後はペースが落ち,6月からは2日あるいは3日おきの間隔になった.そして,7月1日のupdate56からは,Pandemic(H1N1)2009のような表記になった.

筆者は,インターネットでは“WHO update”という用語で毎朝検索して,最新の情報を得るようにしてきたので,以下では,その情報源をWHO 更新情報と呼んでおこう.

そのWHO 更新情報には,報告された国ごとの,国名,確認された感染者数,及び死者数,並びに前回公表時の感染者数と死者数が含まれている.Update31からはエクセルファイルとなってコピーが容易になったが,更新ごとに国数が増えていく上に,その公表時間もばらついているなど,時系列データとして利用するときには,いろいろと注意しなければならない.細かいことは別にして,表1に,世界での感染者数のデータを示しておこう.


「表1 WHOによる新型インフルエンザ感染者数
(主要国について抽出)」へ

推移グラフを見る

WHOのデータは,だいたいは世界標準時(グリニッチ平均時GMT)の6時や7時に発表されるが,公表時間の差は気にしないで,4月25日からの日数を表1の第4列に作成してある.ただし,1日に2回発表されたときは,2回目について日数に0.5を加えた.公表日の間隔が一定でないので,感染者数の折れ線グラフは,散布図機能を使って描く.エクセルで処理してもよいが,StatWorksを使った結果を図1に示そう.


図1.感染者総数の推移

図1を見ると,36日目が6月初めで感染者数が2万人近くなったところであり,そこまでが第46話で示した部分である.前回は,毎日の増加率をみて,増加率が一定とは言えずに減少していく傾向にあり,5月の感染者の推移は,S字型の成長を示すようであったと説明した.

ところが6月に入ってから,指数型の急速な増加を示している.指数型の推移であるときは,散布図に対して,縦軸の変数を対数変換してみるとよい.その結果が図2である.


図2.感染者総数の対数の変化

図2では,6月の少し前から感染者数の対数が直線的に変化していて,指数型の成長であることがわかる.また,図2では,5月の中旬までは,感染者の対数がだいたい直線的であり,中旬あたりから感染者の対数が曲がり始めている.対数変換が大変役に立つ好例である.

日ごとの時系列データとして扱うには,欠けている日のデータを補間するなどすればよい.次回は,そのように加工したデータによる時系列データの分析を説明しよう.また,国別データの推移からも,日本の特異性などいろいろな観察ができるが,これも読者に任せよう.

表1には,7月4日現在での1000人以上の感染者を確認している国のデータを載せてある.


2009年8月19日掲載

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