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第45話 こまサイコロ(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


※ 第45話 こまサイコロ」本編は,著者近況ののちに掲載されています.

リスボンでの国際統計協会大会に参加(著者近況)

2007年8月にポルトガルのリスボンで,国際統計協会(ISI)大会が開催された.

ISIは125年の伝統のある国際学会であり,2年に1度総会が開かれ,政府統計から種々の分野の研究者・教育者が集まる.筆者も20年前から会員になり,毎回出席している.

以前は会員数も限られ,1987年に東京で開催したときは800人ぐらいの参加者であったが,最近は,3000人も集まるようになり,発表件数も1000件に近い.

筆者は,この数年,独立行政法人統計センターで公的統計(最近,統計法が全面的に改正され,英語のofficial statisticsに合わせて,官庁統計を公的統計というようになった)の品質管理に関係していたので,実際の調査で多数検出される欠測値やエラーデータに対する修正値の推定問題(専門にはimputation,補定といわれる)についての研究成果を発表した.

公的統計での品質マネジメントが議論に

公的統計は,政治・行政における政策立案や議論の基礎となるもので,グローバル化の進んだ現在は,政治・行政の透明性や国際的な比較の容易性も求められ,金融市場でも統計の影響は大変大きい.

そこで,各国とも公的統計の情報としての正確性や信頼性を確保するために,個々の調査の品質や公表までの迅速性を高めるほか,統計機関の組織としての中立性や信頼性を維持し,統計ユーザーをはじめとする関係者の満足度を向上させるために,品質マネジメントシステムを確立しようとしている.

一部の国では,ISO9001の品質マネジメントシステムにも関心を持っているが,従来からの管理システムもあるので,欧州各国などは,TQMで提案されているようなビジネス・エクセレンス・モデル(例えば,EFQM,欧州品質マネジメント基金によるモデルなど)を使っている.

今回のISI総会でも,関連の報告がいろいろと行われた.データや統計の質の問題,データや統計に関わる人の職業倫理の問題,そして組織としての品質マネジメントは,政府に限らず,民間の組織においても重要な課題である.

こまサイコロ

写真1
写真1.ラパゲームで使うサイコロ

さて,第44話では,シッチャーマンのサイコロといわれる風変わりな二つ組みのサイコロを紹介した.今回は,リスボンの街角の楽しい店で見つけた“こまサイコロ”を紹介しよう(写真1).

これは,写真のように,普通の丸い“こま”ではなく,4つの面をもっている.木製で,一つの面は2センチ足らずで,指で掴んで軽くまわすことができる.

これは,ラパといわれるゲームに使うそうで,ゲームやサイコロ好きの六一学者は,土産に買って帰り,孫を捕まえて遊んでもらった.

ラパのルール

その“こまサイコロ”の4つの面には,下の図のように,D,T,P,Rという文字が昔の筆記体(Script)で書かれている.

図1
図1.こまサイコロの展開図

ゲームは,次のようなルールで進行する.

  1. まず,数人のプレーヤーでテーブルを囲む.(4,5人が楽しい.)
  2. 飴玉を各人に5個ぐらいずつ配る.(飴玉でなく,石ころでもよいが,食べられるものの方が興奮する.硬貨は勧めません.衛生上,一つ一つが紙で包んである小さなキャンディーがよい.多すぎるとゲームに時間が掛かり,途中で飴を食べてしまう.)
  3. 各プレーヤーは“場”に飴玉を一つずつ出す.
  4. 最初に“こまサイコロ”を回す人をきめる.(回せないような小さい子なら振ってもよい)(ジャンケンで決めてもよいが,ルールの説明もかねて,各人がこまサイコロを振って(回して),Rを出した人を一番にしてもよい.二人以上がRを出したらジャンケン)
  5. 順に“こまサイコロ”を回し,倒れたときに上を向いている文字によって,以下のルールに従う.
    • D のときは,何もしない.(指をくわえさせてもよい.)
    • T のときは,“場”から一つ取る.
    • P のときは,“場”に一つ出す.出すことができなくなったプレーヤーがいたときに,一回のゲームの終了として,各プレーヤーの残り数を記録する.
    • R のときは,“ラパ”と喜び叫んで,“場”にあるものを全部取る.
  6. 次に,飴玉を5個ずつ再配分してゲームを繰り返す.
  7. 泣きだしたり,飽きたりしたら,ゲームを終了し,成績を集計して,ご褒美をだす.

シミュレーション

このようなゲームは,何回ぐらいで終了するかとか,獲得する飴玉が勝ち組と負け組みではどのくらいばらつくかなど,シミュレーションをしてみるとよい.ここでは,一回分のゲームの様子をエクセルで表示してみよう.

表1では,4人のプレーヤーA,B,C,Dについて,最初の配分を5個にして,まず“場”に1つずつ出して,“場”には4個,各人の手許に4個ずつある状態から,乱数を使って等しい確率(1/4)でD,T,P,Rが出現するとして,その経過を示してある.

表1
表1.ラパゲームの様子

ラパとは

ラパというのは,特別な意味というより,“やったー”というような叫び声のようなものらしいが,イースター島のモアイという巨人石造と関係があるらしい.ヤフーで検索すると,片山一道京都大学・霊長類研究所・進化系統部門・教授よるエッセイが見つかった.その一節を引用させて頂く.

モアイの巨人石像で有名なイースター島は、またの名をラパヌイという。ポリネシア語でラパ(Rapa)とは「石の斧」、そしてヌイ(Nui)は「大きな」という意味である。つまり「大きな石斧」の形をした島なのだ。さらに、この島で集められた口碑伝承には、「このあたりには昔、大きな陸地があり、それが沈没したのちに残った島」ということで,「昔々は大地のへそ(Te Pito Te Henua)と呼ばれていた」ともある。

イースター島 ── まさに天然の自然史博物館(ujsnh.org)より

なお,D,T,Pの元はポルトガルから来ている.TとPは,英語のTake(取る)とPlace(置く)につながるが,Dは英語では説明しにくい.日本語で,“だめ”,“とる”,“ポイ”(と出す)などと考えて,こまサイコロの面に書いておいてもよいだろう.


2007年12月17日掲載

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